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2. 天使の怖れ:菊田 裕樹インタビュー下

  • Published at 13:28:41 PT
  • Reported by Jeriaska
  • Contributors: Takahiro Yamamoto
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スタイルのある特有なメロディーと抽象的で激動性のあるコードを組み合わせ、菊田氏の音楽は光と闇の究極性を巧みに表現する。スクウェアでの最後のサウンドトラック「双界儀」は、ライブの楽器音と独特の合成音を使った彼にとって一番特徴的で革新的な作品である。しかし、菊田氏の貢献にもかかわらず「双界儀」のゲーム自体はがっかりする結果に終わり、彼はクリエイティブな自由を求めスクウェアをあとにした。
天使の怖れ:菊田 裕樹インタビュー上.

This interview is available in English. 英語で...

菊田裕樹 の作詞作曲家になる夢はもとをたどると、十歳の時に出会ったエマーソン、レイク・アンド・パルマーに代表するプログレッシブロックグループにあたる。他の次元では、彼のアーティストとしての発展先は多様性に富んでいたであろう。関西大学を宗教学、哲学そして文化人類学で卒業後、自己発明を象徴とした仮名を使い、漫画家としてキャリアを進めていった。そして、彼の作曲の面が独学にかかわらず一番名が通っていた。1991年、未知のビデオゲーム業界へ安定した仕事を求め、オーディションリールを片手に、スクウェアの作曲家、植松伸夫と伊藤賢治のもとへインタビューへ行き仕事を得る。(そのオーディションリールは今、「Lost Files」の名で一般発売されている。)

27歳で「ロマンシン・サガ」の効果音をデザインし、その後まもなく彼にとって初めてのスクウェア RPG、「聖剣伝説2」、「聖剣伝説3」のサウンドトラックを見事に仕上げる。

スタイルのある特有なメロディーと抽象的で激動性のあるコードを組み合わせ、菊田氏の音楽は光と闇の究極性を巧みに表現する。スクウェアでの最後のサウンドトラック「双界儀」は、ライブの楽器音と独特の合成音を使った彼にとって一番特徴的で革新的な作品である。しかし、菊田氏の貢献にもかかわらず「双界儀」のゲーム自体はがっかりする結果に終わり、彼はクリエイティブな自由を求めスクウェアをあとにした。

本日、我々はこのアーティスト、菊田裕樹に、過去の未発表曲と新曲をひとつのコンセプトでまとめ上げた音楽プロジェクト、「Lost Files」について話を伺おうと思う。

Square Haven: 菊田さんは「クーデルカ」の作曲・企画・総合演出そして総監督をつとめていらっしゃいました。そのようにたくさんの責任を負うことにあたって、どのような目標・ゴールがありましたか?そのプロジェクトの将来をどのように見ていらっしゃったんでしょうか?

菊田 裕樹: 基本的に、集団で創作をする場合、責任や判断を複数の人間に分散すると、出来上がったもののクオリティーは下がります。出来るだけ少ない人間が、綿密に連絡をとりあってイメージを共有し、認識のズレがないように適切に判断を下していくことが、スケジュールを守りクオリティーを維持するコツです。理想を言えば、ディレクターひとりが絶対的権限を持ち、作家性を発揮することが望ましいのです。クーデルカという仕事の中で、僕が目指したのは、まさにこういう方向性でした。僕はまず、物語の基盤となる世界を理解するために、中世から19世紀末にかけてのイギリス史に関する100冊ほどの文献を読み、その中から有用なデータやエピソードを拾い出してまとめました。そして、いくつかの歴史的事実を中心に据え、その周囲を創作と虚構で固めていく作業にとりかかりました。たとえば、エドワードというキャラクターは実在の人物である小説化ロード・ダンセイニ(Edward John Moreton Drax Plunkett, 18th Baron Dunsany)ですし、シャルロッテに手紙をしたためる母は悲運の美女と名高いゾフィア・ドロテア・フォン・ブラウンシュヴァイク=リューネブルク(Sophie Dorothea von Braunschweig-Lneburg)です。ロジャー・ベーコンは歴史上有名な哲学者ですし、クイーンアリス号の事故は実際のイギリスの海事記録に載っています。そういった史実の間を、エミグレ書や、再生の儀式などという空想で埋めていくことで、より現実味のある物語世界を構築することを目指したわけです。イギリスはウェールズまで取材旅行をし、本物の雰囲気を自分の目で捉え、背景美術に過度とも思える緻密さを要求し、芝居の呼吸を再現するために当時ハリウッドですら実験段階であった多人数同時モーションキャプチャーを導入し、どんどん高い次元へと作品を押し上げていく情熱に支えられたチャレンジこそが、クーデルカというプロジェクトの本質だったのかもしれません。思い出せばイギリスへ行く飛行機の中で、タイタニック制作時のジェームズ・キャメロンの評伝を読み、彼が映像を構築するために費やす凄まじいまでの努力に圧倒され、創作には狂気を帯びた情熱が不可欠なのだと、再確認した次第。欠片なりとも見習いたいと思ったことが少しでも実現出来ていればいいのですが。

Haven: 「Lost Files」は今までの菊田音楽の進化・エボルーションを反映する総集作品だと思われるのですが 、そのアルバムがどのように1990年初期からの「アーティスト・菊田」の発展をも反映しているとお考えですか?

菊田: 正直、僕は自分が行ってきたことを「進化」だとは考えていません。ひとりの人間が限られた時間を生きて、さまざまなことを経験し、あるいはなにかを手に入れ、あるいはなにかを失い、その時々で自分の在り方に正直に音を紡いだ結果が、僕の音楽なのだと思うのです。僕が、20年近く昔に作った曲を、なんの抵抗もなく世に出せるのは、それが今より劣ったものではないからです。20年前の自分にはその時なりの素直な感情の表現が、今の自分には今の自分なりの複雑な味わいがあります。「Lost Files」が示しているのは、僕の創作という世界に対するアプローチの仕方の一貫性です。率直に言って、僕がしていることは20年前も今も変わっていません。ただ、人間としての在り方や、それを取り巻く時代や社会が変化しているため、そこで表現されるものも変化しているというだけのことです。そして周囲がどう変わろうとも、それを切り取る僕のセンスは不変であり、だからこそ20年前に作った曲と今作った曲を同じフィールドに置いてひとつのコンセプトとしてまとめあげることが出来るのです。そしておそらく、これから20年後に聞いたとしても、変わらない輝きを放つ作品になっていると信じます。

Lost Files: Click on image for music sample



Haven: 次の菊田裕樹は?

菊田: ここ数年の目標として、仕事如何に関わらず意欲的に音楽を作り、CD化していくことを目指しています。ですが、いつか実現したいと思っているシンプルな夢があるので、そのことを話しましょう。僕は、1950年代にハリウッドで作られた、ジーン・ケリーやフレッド・アステアなどによるミュージカル映画が大好きです。「雨に唄えば」(Singin' in the Rain)を観終わって、映画館を出るとき、ふと唄いだしたくなる。それこそがエンターテイメントのもつ、真の魅力だと思うからです。僕が長年抱いている夢は、ミュージカルを作ること。メディアは、映画でもゲームでも構いません。素敵なメロディーに乗せて唄い踊る、楽しくほろ苦い物語をいつか作りあげたいと、心から願っているのです。

Haven: 最近のゲームソフトは急速に変化していっています。これから先、ゲームソフトというメディアがどのような道を開いていって欲しいとお思いですか?

菊田: ゲームというメディアは、インタラクティブ性が新しいのだとよく言われますが、そうは思いません。従来からある演劇やマジックも、舞台の上とそれを見る観客とのコミュニケーションによって成り立つもので、十分にインタラクティブな要素を含んでいます。実は、ゲームというメディアがその独自性を発揮するのは、極めてパーソナルな装置でありながら、あたかも開かれたものであるかのような架空の世界を構築し、それを通じた他者とのコミュニケーションを実現する場合に他なりません。そういう意味で、ゲームソフト開発の大きな潮流が、今後より強くオンラインゲームに向かうことは自然な成り行きだと思います。僕自身、「超武侠大戦」(Tyou Bukyo Taisen)というオンラインゲームを設計して思うことですが、オンラインゲームにおけるゲームデザインは、スタンドアローン向けのゲームデザインと根本的に異なります。制作者によって作りこまれたイベントよりも、プレイヤー同士のコミュニケーションと自発性を根本に置いた設計こそが求められるのです。昨今開発されるオンラインゲームが揃って短命なのは、設計思想の転換をしないまま、旧来の手法に頼ったゲームデザインをするからで、今後のゲーム業界を担うスタッフは同じ過ちを犯さないようにしなくてはいけません。ゲームというメディアはまだまだ未成熟です。これからもっともっと研究され、分析され、緻密に練りこまれた、コミュニケーションのためのコンテンツが生み出されるべきです。みんなが、現実と同じ確かな手触りで架空のゲーム世界を生き、そこで出会った誰かと心を通じ合って、未知なる場所へ冒険の旅に出るとき、僕の作る音楽がその決意を後押しするとしたら、これにまさる幸せはないでしょう。

Dawn of Mana (remix by Masayoshi Soken)
Click on image for music sample



Interview conducted by jeriaska. Translation by Taka Yamamoto.




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